No Way To Say 12

  飲み込む涙  

液体を見ると、鴉は笑う。
「ご褒美だ」
「なっ…ぁ!!」
鴉のものが、奥をつくと、細い腰が、ガクンと揺れた。
切り裂かれた感覚が、蔵馬を襲う。
「入ったじゃないか」
高い笑いが、頭の奥まで響く。
背を流れる汗が、鴉の腹に落ちた。
熱い何かを打たれたようで、目の前が歪んでいく。

強く腰を掴まれていた。鴉は、既に大きく主張している。
進入してくる鴉を、拒みたかった。こんなのは嫌だ。

天井が霞み始め、一瞬瞳を閉じた。
このまま…閉じてしまいたい。
そう思った途端、襲った痛みに引き戻された。
「ちゃんと感じろ」
ずしん、という衝撃に思えた。

鴉は笑い、何度も、蔵馬の腰を上げては突き落とす。


「あぁ…!」
か細い悲鳴が、本能をくすぐる。

腰も足も、全てが、薄っすらと灯る明かりに映える。
蔵馬の流す汗が、露のようだ。


「あぁ!」
鴉が大きく突き上げると、蔵馬は鴉の上に、倒れ込んだ。


「もう逆らわないな」
遠く、鴉の声が聞こえた。
「…は、はい」
「それでいい」
鴉は、蔵馬のからだを突き飛ばした。仰向けで、寝台の上に蔵馬は倒れた。

「理解出来たか」
鴉は蔵馬を一瞥すると、抱き上げて蔵馬の部屋へ運んだ。


そして、乱暴に、寝台に蔵馬のからだを投げた。


「うっ!」
ガッという衝撃で、蔵馬は呻いた。

パタンと、自分の主が出て言った音が聞こえた。


------

這うようにしてからだを動かし、蔵馬は寝台から床に落ちた。

喉をせり上げるものが、あった。
「あ、ふ…」
ふらふら立ち上がると、蔵馬はそのまま、洗面室を開ける。

洗面台が見えると、大きく息を吐いた。
こみ上げるものを、我慢できなかった。
肩が上下する。蔵馬は台の中に、顔を突っ込んだ。


「…けふ…」
絡まるような胃液だった。
「こほっ……」
一気に、胃液を出した。

澄んだ水を、蔵馬はぼうっと見つめた。

「…ぃ……」
思わず、蔵馬は、その名を口にした。

Copyright (c) All rights reserved.