No Way To Say 16

モクジ

  閉じられた瞳  

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「…いたっ…」
蔵馬は息を呑んだ。

自分を抱き上げる腕は、冷たかった。


「黙れ」
鴉はそう言うと、早足で階段を下りていく。
一つ階を降りると、灰色の壁が続くだけの、暗い廊下に突き当たった。

さび付いた扉が、いくつも続いていた。
蔵馬の顔が青くなった。

…鴉の向かう場所が、わかった。



「ぁっ…」
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-鴉の腕の中で蔵馬は震えだした。

今にも埃が舞いそうな廊下を、鴉は黙って進む。


「鴉さま…」
…鴉が目指した場所。噂だけは聞いたことがある部屋。


「やめて!」
キイ、と、鈍い音がした。
錆びついている扉だった。部屋とは言い難い、暗い空間が広がった。

手を伸ばしても届くとは思えない、高い鉄窓。無機質な部屋。
奥にある風呂場への扉と、鉄のような硬い寝台。

「今日からはここが、お前の部屋だ」
「鴉様!」
蔵馬を突き飛ばす音が響いた。
固い寝台の壁に手を打ち、赤い痣が浮かび上がる。


蔵馬の高い声が響いた。


「私は、裏切りが嫌いだ」
「ひっ―!」
喉元に突き付けられたものに、声が上がった。
…鋭い刀。


白い首筋に、刀が光る。ピィ、という音が、空気を割いた。

「ぁ!」

鴉は、蔵馬の服の合わせ目を切り裂いていた。
羽のように布が舞う。
蔵馬のからだに残ったものは、腰に絡まり、肌が露になった。
中心を隠すだけの薄布から、柔らかな足が透けた。
しなやかな胸が、鴉を迎える。ぐちゃぐちゃに、してやりたいと思った。

「お前は言ったな、私を愛していると」
「はい…」
「それは嘘だった」
言った途端、刀で蔵馬の顎を上向ける。
銀の刃が、鉄窓から見える月の光に反射した。
蝋燭の下で、銀の光が鴉の瞳を映す。
白い姿が、涎を垂らしそうなほど、煽情的だった。

「うっ…!」
「飛影とは、初対面だとでもいうわけか」
首筋から刀を離し、蔵馬を突き飛ばす。
蔵馬は、寝台の上にうつ伏せに倒
れこんだ。
「…忘れたと思っていたら、逢引とは、な」

蔵馬は振り返った。


「飛影様とは只一度、偶然会っただけです」

「…うるさい」
鴉はパタンと戸を閉めて出て行った。しかし数秒してキイ、と扉が開いた。

「ぁ!」
鴉は、蔵馬の服の合わせ目を切り裂いていた。羽のように、
布が舞う。蔵馬のからだに残ったものは、腰に絡まり、肌が露になった。
中心を隠すだけの薄布から、柔らかな足が透けた。
しなやかな胸が、鴉を迎える。ぐちゃぐちゃに、してやりたいと思った。
「お前は言ったな、私を愛していると」
「はい…」
「それはだった」
言った途端、刀で蔵馬の顎を上向ける。銀の刃が、鉄窓から見える月の光に反射した。
蝋燭の下で、銀の光が鴉の瞳を映す。
蔵馬の白い姿が、涎を垂らしそうなほど、煽情的だった。
「うっ…!」
「飛影とは、初対面だとでもいうわけか」
首筋から刀を離し、蔵馬を突き飛ばす。
蔵馬は、寝台の上にうつ伏せに倒れこんだ。
「…忘れたと思っていたら、逢引とは、な」
蔵馬は振り返った。
「飛影様とは只一度、偶然会っただけです」
「…うるさい」
鴉はパタンと戸を閉めて出て行った。しかし数秒してキイ、
と扉が開いた。

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鴉は、一人ではなかった。部屋に中に入ってきた男。宮廷
の武術会で見た奴。

「…」
剛鬼という男。蔵馬より、二回りは大きい。
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-鴉は、一人ではなかった。部屋に中に入ってきた男。宮廷
の武術会で見た奴。
「…」
剛鬼という男。蔵馬より、二回りは大きい。

「鴉様、こいつですか」

「っ…う」
鴉は、寝台に載り、蔵馬の頤を取った。
「お姫様の身体を慣らしてやれ」
ヘヘ、と笑って剛鬼は蔵馬を舐めるように見た。
「お許しが出たぜ、お姫様」
キシ、と寝台が揺れた。
剛鬼は寝台に腰を下ろすと、蔵馬を突き飛ばし、頭を抑えつけた。

モクジ
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