No Way To Say 24

モクジ
――
部屋に駆け込むと、飛影は剣を投げた。

――いや、違う。気付いていたはずだ。自分は。


遠く、声がした。蔵馬を追い込んだ責任は―自分にある。
体中が燃えるようだった。許せないのは自分か、鴉か。両方か。


唇が切れても、痛みさえ感じない。――暫く無言でいた飛影は、引き出しを開けた。




『あなたが持っていなさい』遠い昔、渡されたもの。

『使い道を決めよう』小さな鈴――母親がこの世から消えた晩に、そいつと交わした約束。


飛影の村には、ただひとり友人がいた。

まだ、飛影が皇族になる前の話。母を亡くした飛影のところに訪れた友
人と、交わした約束。

――これを鳴らせ、そいつは言った
約束をした。出された指に、飛影も無言で指を出した。


澄んだ音。
そっと、中庭に出た。


3回ほどで、茂みが揺れた。
「来たか」
飛影の声は、小さかった。足元から、一人の少年―飛影と同じ歳だろうか―が出てくる。

夜の暗い色に似合わぬ、
明るさを纏う少年だった。


「何ヶ月ぶりだよ。気まぐれなやつ」
悪態をつきながらも、少年は笑っていた。


「幽助」
飛影は冷たく返す。幽助、と呼ばれた少年は、すぐに真剣な顔になった。

二人の目が合う。それだけで十分だ。


二人の間でしか見えないものが、そこにはあった。


「で、どうした」
幽助は顔を近づけた。
「幽助…仕事だ」
モクジ
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