濁った夢3

回廊



―――かえして―――
氷泪石、返して。言いたかった。

しかし―――。





「んっ―――!」
噛みつくような口づけに、蔵馬はむせそうになった。
一瞬目が合う。幽助は、今までに見たことのない、燃えるような瞳
をしていた。
「んう!」
何も言わせないというように、舌が入り込んでくる。
ぬめぬめとした感触に、蔵馬の舌が逃げる。
それを許さず、絡め取り、唾液も一緒に蔵馬の唇で暴れ回る。
「あっ…っふ」
口づけている間に、幽助は両腕で蔵馬の両手を頭の上でねじり上げた。
一瞬苦しみに顔を歪ませたが、蔵馬は直ぐに、幽助の舌に翻弄された。
わざとなのか、ぬるぬると執拗に追いかけて、舌の奥まで何度も
行き来する。
深い碧に見えていた蔵馬の瞳は、間近で見ると、深い青にも見える。
綺麗だ。

自分で満たしてしまいたい。
幽助の中で、どくんと何かが脈打った。

蔵馬の胸でたくなっているシャツをずるずると脱がせる。カッと蔵馬の
顔が紅く染まる。
唇を離すと、蔵馬の顎を唾液が伝う。妖艶だった。
それを、幽助が舌で舐め取る。左手だけで容易く蔵馬の両腕を押さえ込むと、
幽助が何度も、蔵馬の顎から首筋をなめ回す。
「ゆ…やめて…」
知っている幽助の笑顔ではないし、幽助の腕に、こう言う形で触れたのは初めて
だった。

「何言ってるの?もうこうなったらどうなるか、一つでしょ。」
すうっと、右手が蔵馬の首筋を撫でる。

―――幽助の手が、氷のように冷たく感じた。
胸の飾りに唇を近付けると、うっとりとそれを眺める。
「綺麗だな、女みたい。「…っ!」」
透明な雫が頬を伝い、蔵馬が顔を横に倒す。

女みたい…。
幽助の舌が、それを目指して首筋からゆっくりと徘徊する。
「あいつも触ってるの?」
言った瞬間、それに歯を立てる。


「いった…!あっ…あ―――!」
―蔵馬の身体が跳ねた。
驚きと痛みが交差して、幽助の言葉がゆっくりと入ってくる。こんなことをするのは、女の代わり?
分からない…けれど、そんな迷いに浸る余裕が、なかった。 「蔵馬」
くす、と笑い、幽助は唇を離した。
そして幽助は力を入れて蔵馬の上にのしかかった。
「うっ…!」
くちゃくちゃ、と言う音を立てて舐めては歯を立てる。
舌先を使い、何度も往復する。


蔵馬の胸飾りが立ち上がっても、幽助はその先端まで何度も舐める。
舌の温もりが、嫌らしい音になる。
「ぁう…。」
ほんの僅か、甘い刺激になった。
蔵馬の腰が跳ねるのを逃さない。
「ん!!」
今度は指で、摘み上げて、同時にもう一度、舌を絡め取られる。
絶対逃がさない、その意志のように。




初めて見た蔵馬の身体は白く、美しかった。
今この身体が、白い小鳥のように自分の腕にあると思うと、
堪らなくなった。

「あ…あ…っ!」
ほんの少し漏れる甘い声の間に、悲鳴のようなものが交ざる。
胸飾りから臍まで撫で上げた幽助の指が、下の服を全てはぎ取る。
はっとして、蔵馬は足を動かし始めた。

――いや―こんな―――これ以上―


無理矢理入り込まれた森の中でも、許し難い場所がある。
秘密の宝がある場所。…蔵馬という森の…奥にある…あのひととの記憶。
一人しか立ち入れない場所。

足を開かれまいとして蔵馬は、暴れ始めた。
力が入りきらないけれど。幽助のからだから逃れようと、全身をばたつかせる。

纏められた両腕には、ろくに力が入らず、それでも、出来る限り藻掻く。
「いやっ!」
「無駄だって。」
せせら笑う幽助の声がして、ぐい、と両足に力を入れられる。
「っ!」
直に感じる幽助の力に、腕と足から力が抜ける。
のしかかっていた幽助が、その両足に力を入れて蔵馬の足を開かせる。


「綺麗な足。」
うっとりとした幽助の声が不気味だった。
蔵馬の膝から太ももを撫で上げる。びくっと蔵馬の身体が跳ねる。

「本当、夢で見たとおりの身体――。初めてを俺が貰いたかったわ。」


蔵馬の頬が震えた。
その一瞬を狙って、幽助が蔵馬の足をバッと、思い切り開かせる。
「やっ!やめてっ――!!いやぁ!」
見られている。開かれた足の中心のものと…周りの毛が空気に揺れるのが、幽助に見えた。
見られたくない。その意識が体中を駆け巡る。

熱かった。
興奮よりも、身体の中心から鳴っている 警戒と、悪寒で熱さが駆け巡る。

「あ!」
両手を絡めていた手が離れ、手首が軽くなる。それでも、赤い痣が出来ていて、腕が痺れている。
じんとして、指先だけしか動かせない。


蔵馬の指先が床の上で、何かを求めるように彷徨う。
…やめて…だめ…

小さな唇が、ひ、と言おうとして…言葉にならなかった。
「なに、考えてんの?」
脳天を直撃するような声が降ってきた。
「今の状況、逃げられるの?」
何かに、幽助の指が触れてびくっと蔵馬の足が震えた。ふわふわと漂うような毛を、幽助の指がかき分けていく。
中心にある毛をかき分けて、中心を探り当てる。
「へえ…少し濡れてる。お前も男なんだな。」
くす、と笑う声が、新たな涙を誘う。

「ほら、素直になれよ。もっと…声、聞かせて。」
ぬる、と舌を臍から中心まで這わせて、両手でそれを梳き始める。蔵馬のものが、ふるっと、反応した。
「あっ…!あ…」
ゆっくりと梳くと、蔵馬の黒髪が床の上で揺れた。
いやいやと首を横に振る姿を、何度もちらりと見る。



扇情的な表情をもっと知りたい。こいつはおれを、誘惑している。
無意識かどうかなんて、知らない。


もっと崩したい。
「恥ずかしがったってだめ。全部見られてるの、わ、か、る?」
蔵馬は、唇を噛む。長い睫毛が揺れた。


「うっ、う…」
小さな呻きと、唾液が流れる。
「泣いても駄目。ほら、ここら辺、感じてるの分かる」
なあ、と蔵馬の耳元で囁くと、嘲るように、力を入れて中心の毛に触れる。
さわさわと、幽助の指が中心の毛を撫でて、上がりそうになる悲鳴を堪える。

…ひ…
助けて…
こんな抱き方あなたはしない…


弱々しく、幽助…の上を指が這う。
「無駄だって言ってるのに…な。一途で可愛いけど、な。」
そう言うところ、そんな予感がしてた。
「でも、ほら…!!」
幽助の舌が激しく、蔵馬のものを舐めあげると、
「っ…んうっ…」
蔵馬の膝が小刻みに震えた。

今までとは少し違う甘さに、幽助がにやりとする。

「ふ…ん。もっと、よくしてやる。感じて居ろよ。」
蔵馬の足をぐいっと持ち上げ、抱え上げる。

蔵馬の位置からでも、自分の足が見えるほどに抱え上げる。


あっと、蔵馬の、喘ぎと悲鳴を混ぜたような声が響いた。
二つ折りになった身体を感じて、大きく首を横に振った。
次の瞬間、蔵馬は瞳を大きく見開いた。


「いや、それはっ…いや!!やめて!!」
「もう、おせえよ。」
蔵馬の身体に、熱いものが重なる。股の間から…幽助の身体が見えた。そそり立っている、
幽助の男性の証しが…ヌメヌメと主張していた。
蔵馬の肌を見れば更にそれが膨張していく…。
ふあ、と蔵馬は声を出した。僅かに引いた、幽助の身体。
「っ…!!」
一瞬、身体に力が入り、足を閉じようとまた藻掻きめた。
「もっと濡らそうと思ったんだけどな…お前の心、俺にないから。」
幽助を、見られなかった。
「まだ抵抗できると思ってるの?でも、ほら。」
ぐい、と幽助は、自分を押し込む。 「あっ!!や……」
ぐいぐいと蔵馬の中をかき混ぜるように…怒張を繰り返し揺れる、幽助のもの。
「あっ!!あ…。」蔵馬の口が、ぱくぱくと開き、唾液が何度も顎を伝う。
「きっつ…あいつとは、ご無沙汰なのか?」
ずる、と引き抜かれたそれ。とろ、と蔵馬の腹に、愛液が落ちた、中で、蔵馬が幽助のものを塗らした液体。
いったん抜いて、蔵馬の中心を激しく舐め挙げる。びくびくと震え上がったそれは…ぬちゃぬちゃとした舌に、
直ぐに喜びのように膨らんできた。
「あっん…」
ほんの僅か力が緩んだ時を見て、今度は限界まで、足を開ききらせる。
二つ折りの身体の、蔵馬の足が全開になると…ひくつく自分のものと、それを舐める赤い舌が眼に入った…。
「んう…あっ…やっ…」
冷たい風が下半身に入り、そしてもっと露わになった格好で涙が止まらない。

「ちゃんと全部見せてくれよ。」
途端、蔵馬の足が、跳ねた。膝がひくひくと、震える…。涙が飛び散った……幽助の塊が、一気にねじ込まれた。
ぐいっと、もう一度一気に入れる。感じた異物感に、黒髪が揺れる。
「いやあぁ!!あ…あ!」
裂かれる痛みに、腕とつま先から、完全に力が抜ける。



助けて…飛影…
熱い…
…助けて…誰か…
時に優しく自分を抱きしめる腕を思い出す。
飛影…
飛影…

助けて…躯…





―――――――――
「お兄さん、今日は珍しいね、あの恋人は一緒じゃないのかい。」
魔界に出来た雑貨屋の通りで、飛影が声をかけられた。
「うるさい、黙れ。」
待ち合わせは30分前だったはずだ。
最近魔界では、人間界を模したアクセサリーの店や食べ物も店が多く
できている。
その中の一つ、蔵馬のお気に入りの店で、おそろいのネックレスを買う
予定だった。




夕方から時間があると言う話だったので、蔵馬に合わせた。
全く、自分がこんなに蔵馬に甘くなるとは思わなかった。
それが、正直な感想だった。




しかし、蔵馬は来なかった。




「蔵馬―――?」

蔵馬の気配を、感じられなかった。

蔵馬は自分を裏切ったのだと、感じた。



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