濁った夢 7

夢幻

眠りなさい 今はただ私の中でどこにも行かないで
微睡の淵で揺れてる 群青色の夜
交わることのない星を 探してる



・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥


…飛影…
柔らかい声が聞こえる。
そして、机の隣にあるチェストに置いてある、それを手に取る。

懐中時計。
何か言われるのが嫌で、普段はつけていない。カチャチとふたを開けると、中には、小さな花びらがある。
蔵馬が、これ、良い香りですよ、と言って、渡してきた花びらだ。
その香りはジャスミンに似て、
癒される気がした。香りが消えないように、蔵馬が細工した。

あなたを想っていると言われているようで、時折蔵馬が気を飛ばして
くるのが心地良い。



そんな日々を、飛影は密かに送っていた。
しかし…
「あいつ!」
トンと音がして、懐中時計が壁に当たって落ちる。壊れはしなかったが、
蓋がずれていた。
「くそ!」
苛立ちが飛影を包んで、そして数日経っていた。
怒りの炎、と言うよりも、出口が見えない黒い炎が飛影を包み込んで
いる…そんな感じだった。
…なぜ…
いくら考えても、答えが導き出せるはずもない。何度か話しかけようと
してくる時雨の存在でさえ、今は苛立ちを助長するだけだった。



・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥





「う…」
違和感に、目をあける。記憶に残るのは、冷たいベッドの感触だけだったのだが…。
「あ…れ…」
意識が浮上してきて、指がシーツを手繰り寄せる。上品な素材を、指で絡め取る。
どうしたんだっけ…
かけらの記憶を手繰り寄せる…が…
「あっ…!」
体中に寒気が走った気がした。幽助に、見られたことも真珠のことも…途切れ途切れだったものが
繋がっていく。
「どう?良いベッドだろう?」
突然、明るい声がして、蔵馬はハッとしてその広い部屋の入り口を見た。
訓練後なのかタンクトップとズボン姿の幽助が、ニコニコして立っていた。
「本当に綺麗だな…。」
うっとりとした目は、蔵馬を舐め回すように何度も見つめる。


「や…」
ベッドに乗り込んできた幽助が、ベビードールをなぞる。ぞわ、として、蔵馬は小刻みに震えた。
すっと、太ももをなぞると、黒いタイツが扇情的だった。

「ずっと、水と栄養剤だけだっただろう?」
何か食べたいものあるかと言われても、蔵馬はいつも、力なく首を振っていた。
唯一出来る拒絶だった。


「だからこれ、持ってきた、凄い美味しいんだぜ。」
後ろから、何かを差し出して、自然蔵馬は後ずさった。嫌な予感がする。
心配している空気が、逆に警戒を煽る。
「ちょっと高いやつなんだけど、お前にもと思ってさ。」
「ん!!う…!」
ぐい、と口に押し込まれたものに、逆らうことも出来なかった。
口の中に、甘い何かが広がる。
「いい味だろう?このクリームパン。」
ぐ、と言う蔵馬に優しく問いかけて、一回パンを取り出す。
「っ…ふっ…」
突然受け入れた食べ物に、身体がすっと飲み込めることが出来ない。
何度も咳き込んで漸く喉に流し込む。


「やっぱいきなりは辛いよな。食事してなかったもんな。」
パンをちぎって、蔵馬の口に詰め込む。
「あっ―――!」
甘い香りとふんわりとした感触が口に広がる。
こんな時でなかったら、幸せな気持ちだったかもしれない。



「ん―――ぐ…」
最後に詰め込まれて、こくんと喉に流し込む。
予想もしなかったものと勢いについて行けず、口の周りに白いものが残っていた。
「クリーム、ついてる。」
「―――!」
取ってやると言って、幽助が唇を近付けた。ぬるぬるとした舌が蔵馬の頬を舐め回す。
「や…」 甘い匂いを、蔵馬の頬に塗りつけながら幽助は笑っていた。



「俺のこっちも、舐めてくれよ。」
びくっと、突然の言葉に、蔵馬の瞳が見開いた。
…なに、言って……
「あいつの舐めてたじゃん。こないだ。」
蔵馬の脳裏に、見知らぬ男のものを舐めさせられたことが蘇った。
「あれは無理矢理っ…やめ…!」
言った瞬間、仰向けにされていた。
「や!い…や!」
蔵馬の頤を取って、ズボンのチャックを開けると、蔵馬の口をぐっと開き、思い切り、押し込んだ。



なぜだろうか、何もそう言う行為はしていないのに、幽助のものは濡れて膨らんでいた。
「…あぐ!」
獣臭のような…欲に濡れた先端が蔵馬の歯を割っていく。
喉奥を突き刺すのではないかと思った。
独特の感触に、苦しさと混乱で、逃げる手段も浮かばなかった。



「ほら、舌動かして。こないだので慣れたでしょ。」
能に突き刺さるような声に、カタカタ震えながら、小さな舌を動かすしかなかった。


「そうそう…」
「う…ふっ…」
知らず、涙が頬を伝った。
のしかかった幽助の瞳が、熱くかった。幽助のものが、蔵馬を見ているだけで膨らんでいく。
赤黒く怒張が滾り、ぶると跳ねた。

小さな口を奥まで突くと、蔵馬が声にならない声を上げた。
綺麗…
蔵馬を見つめて、何度も幽助は思う。
長い睫毛が小刻みに動くのさえ、美しい。
黒髪がベッドに広がると、それを違う色に染めたくなる。


涙を流しながら自分のものを舐める様は、芸術か、と思った。
どくんどくんと、鼓動が速くなるのを幽助は感じた。


「あぐっ!」
ぐい、と前のめりになって一層奥にそれを突き刺す。
舌を動かす隙もないくらいに、幽助のものが膨らみ。
大きくなって蔵馬の喉を突き刺す。

「っ…出るッ!」
「っ…や…ん!」
頤を取った手に力が入る。そして…
「うっ!―――けふっ「くっ…!は…あぁ…あぁ!」」
熱いものが放たれて、圧迫感が消えた。が―――
「お前、最高。あ、汚れちまった…。」
蔵馬の青ざめた口の周りについた液体を、指で広げる。
液体を掬って指に伸ばし…べっとりと蔵馬の頬に塗りつけていく…。
や、と言おうとした蔵馬の口に指が突っ込まれた。

「ぐっ……」
ごつく太い指が、小さな口をかき回す…。

「…ひっ…」
「そのベビードール、すげえ似合うよな。ちょっと、女じゃないか、確かめさせて。」
「なっ…!そんな!」
このベビードールから透ける肌が…何も汚れてないように美しい。
自分の手で、あいつから取り上げたい。
ぐいっと身体を引かれて、別の視界が広がった。ベビードールが、蔵馬の腰からひらひら舞った。 幽助の口から…よだれが落ちた。それは蔵馬の腰を滑らせていく。

四つん這いにされて、目の前にふわふわのシーツが広がる。
ベビードールを後ろからまくられて。

幽助がじっと、尻のあたりを見つめているのを感じた。
「う…」
奥を見つめられている、その恥ずかしさで胸が熱くなった。




蔵馬のベビードールは後ろからまくられているが、腰のあたりでたくなっていて、
妙に色っぽかった。

「俺のものも、さっきのパンと一緒で、咥えてくれよ。」
びくっと、蔵馬の尻が震えた。
身体を支えた足が崩れそうになったのを、幽助の腕が支えた。
盛り上がった尻を、幽助ががっちり押さえ込む。
幽助の腰が熱さを帯びていた。


…そんな…むりだよっ…
何の流れもなく、何の甘さもなく、そんなこと…出来ないよ、と思った。
それだけが、考えられる、精一杯だった。



ぐい、と腰を引かれて、熱いものが突き刺さった。

「あ、あ、ひっ…!!」

ぐいぐいと押し込まれるものが、身体を引き裂くようだった。
蔵馬のものも少しずつ反応するが、四つん這いの腕や足が、しっかりと自分の身体を
支えることが出来ず、何度も倒れそうになった。
それを、幽助の腕が許さずに押さえつけ、パンパンと、自分のものを振動させていく。
傘をねじ込み、先端を突き引いて…それを繰り返す。
蔵馬の奥が…ゆるゆると濡れてきた。
ぐんと、蔵馬のなかでそりかえった幽助のものが、どんどん膨らんでいった、
爆発しそうなのを、まだまだと、荒い息で止める…。
もっと、蔵馬が感じる絶頂に達したい。 蔵馬を幽助だけに染めたい。




「うっ…ふっ…!あ…お前の中熱くて…すげえっ…!」
「ひぃっ…あ、あ―――」
ベッドの上で、幽助の与えた真珠だけが揺れる。シャンデリアの光に反射して行く。 煌めく真珠の光、しかしその周りには蔵馬の垂らした液体。
ぐいっと、腰を後ろに引かれ、がくんと蔵馬の腰が上がった。
…その襞の奥も脈打つ幽助自身も、
まるごと。

反射的に、蔵馬の前のものを、幽助が締め上げた。強く、梳くように。
びゅるんと、蔵馬のものが跳ねた。
「あっ!!ああ!」
一瞬の、差だった。蔵馬のものが、出すのが…早かった。くくっと、幽助は笑った。
「出すぞっ…!」
「い、や…!」
目の前が真っ白になった。



幽助がそれを出し切ったと同時に、蔵馬の身体は倒れ込んだ。
「ぅっ…」
虚ろな目で、唾液と幽助のものから出た液体と、クリームで口の周りが妙な艶を醸し出していた。








…助けて…
「ぃ…く…」
忘れることの無かったその人と、強く優しい女王の名を、小さく呼んだ。

黒いタイツとベビードールの間に覗ける白い肌が、幽助のもので濡れていた。

「お前の身体もその顔も…全部…離したくない。」
蔵馬の身体を腕に抱えて、与える口づけだけが優しい。




その二人を、遠く見つめる瞳があった。



Copyright 2017 All rights reserved.

-Powered by 小説HTMLの小人さん-