indispensable pride of5
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コトコトと、沸騰する音がした。
ビーカーに紫の液体を混ぜ、蔵馬はそれを何度も見つめた。
汗を拭い、瞳を凝らす。
そっと、ベッドを見つめれば、胸が痛む…分かっているのに見つめればその人が
そこに居る、甘さの矛盾。
「くら、ま」
そっと何度か聞こえてくるその声に、何度も胸に手を当てる。
ふっと、首を横に振り、ゆっくりと液体をかき混ぜる。
蔵馬、と飛影は何度も呼んでいた。
あの抱き留める優しい腕が、今こんなに、それとは違う熱い熱を持って
自分を呼んでいることの、
意味は何か。
こんな時に、互いが互いを呼び合うなんて…痛みと裏腹の、湧き上がる満ちた感覚。
…こんな時に、皮肉だと少し自嘲をした。
「…俺が、ついているからね」
どんなに離れていてもあの時、又会いたいと交わした約束が
飛影が中に確かに存在する。
胸を痛めているこんな時に、飛影には背を向けたまま思わずふっと笑いが漏れた。
百万回誰かに好きだと言われるより、たったひとつ好きだと言ってくれた人の情熱を信じている。
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