背徳は甘い香り

モクジ

  X 抱きしめてやる  

「んっ……」

彷徨う右手を、コエンマは取った。

白い頬が、紅潮して自分を見上げている。
その様を見れば、これを汚したくはないと、それだけを思う。

この白い身体のどこも、汚したくはない。
あの時振り上げられた手が下ろされることがなく…。それはちいさな救いだった。

「コエンマっ…」
好きですと、小さく声を漏らすこのひとを、守れるだけの強さはどこに宿るのか。
熱くなった身体を進める度、コエンマは蔵馬の頬を撫でた。

「んっ……」
は、っ…と漏れる息が熱く、もっとと疼くからだが止められない。

突起を吸えば蔵馬の息が止まる。
引きつったからだの奥が確かに自分を求めて震えているのを満足げに
コエンマは見つめた。

「んあっ…」
広げた足が。ビクビクと震えていく。
煽っているのか、と一瞬意地の悪い言葉を投げたくなるのは…綺麗すぎる
この人のせいだ。

「あなたも…後悔…しないでしょ」
聞こえた声は、鋭い矢のようだった。
高まる熱の中、荒い息の中、蔵馬はそっと問いかけた。

「蔵馬…」
うっとりとコエンマを眺めながら、それでも消えそうな戸惑いが蔵馬の瞳に漂っていく。

「そう、だよね」
自ら唇を近づけ、蔵馬は身体をきつく締め付けた。

「っっ…」
刺激に、声を上げたのはコエンマのほうだった。

「そうだよねっ…」
熱く、熱く蔵馬はコエンマを締め付けた。
開かれた膝の中、コエンマを奥へを誘い、胸を擦り合わせた。

「お前と、同じだ…」
熱く、コエンマは問いを返した。熱く、コエンマは問いを返した。全ての心をを吐き出せばいいと、思った。

「どんな時だってお前を守る」

ぐいと、コエンマは身を進めた。
「あっ…あつ…っ…」

しがみつく蔵馬の手を、きつく握り絞めた。

「好きだ」


モクジ
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