誘惑をはねつけて
2 そのトゲに息を潜めて
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「ああっ!」
爆弾の、音が幾つも響き渡る。蔵馬の黒髪が、ブワッと靡いて、そして
それは吹き出す朱にまざり、陽の光の下で不気味に光った。
腕から吹き出すその朱と、繰り返される爆発に、蔵馬は膝を落とした。
ダウンです!と言う声が聞こえた。
飛影の鼓動こそが、爆発しそうだった。駆け寄りたかった。
蔵馬の手を取ってそして…?
逃げてどうなる。
そんなことは今はどうでも良い。
ただ、見ていたくなかった。
…けれど、遠く、掠れるような声が聞こえた。
…ひ、えい。
人形のように、小さく蔵馬の唇が動いていた。ドクンと、飛影の胸が、熱く疼いた。
確かに、聞こえたその声。
頬にかかる黒髪が力なく動いた。指先が、這うように、闘技場を擦るように動く。
細い指先が、真っ直ぐに、飛影の方へ…。
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